ガイド前(外国人のお客さまに会う前)に、必ず確認することリスト ~基本編~

外国人のお客さまと会う前に、いつも確認することがあります。

10日~14日間程度のツアーの場合、その期間中は毎日チェックします。

通訳案内士の方だけでなく、外国人に接する機会のある方(例:会社員の方・観光業に従事される方・学生さんなど)にとっても、参考にしていただける部分があるかもしれません。

また、日本から海外へ留学したり、海外旅行へ行く際、下記の視点で下調べをしておくと、現地に行ってから役立つ可能性があります。

なお、文中にあります「訪問地」とは、日本国内を指します。

 

1、訪問地の歴史&最新ニュース

  • 訪問地の歴史

その日(又は翌日)訪問する場所の歴史について話せるようにしておくことは、最も大切な準備です。

しかし、知っていることを全て話そうとするのはNG.

言いたいことの10分の1を話そうと思えば、おのずと「最も大切な部分」のみをお話しできます。

冒頭の写真は、「高野山の歴史」です。(パンフレットから)

本にすれば何十冊にもなる内容を、見事にまとめてあります。

 

  • 最新ニュース

お客様と訪問する場所の歴史についての説明のほか、それ以外の時間(食事中・移動中など)に話す内容の準備も必要です。

そんなとき、最新ニュースはちょっとした世間話や良い息抜きになるので、ざっと目を通しておきます。

ずっと、歴史や文化の話では、お客様も疲れてしまいますので。

外国人のお客様の中には、日本のニュースをよくチェックされている方もおり、「そんなことまで知ってるの?!」と、こちらが驚かされることもあります。

 

<実際に聞かれた質問の例>

「昨日、選挙があったみたいだけど、投票率はどの位だったの?」

「日本と韓国が野球をしたみたいだけど、どちらが勝ったの?」

「いま、相撲トーナメントが行われているみたいだけど、どんな様子?」

 

 

2、訪問地の人口・地理・天候・ルート

  • 人口(必須)
  • 標高(メートル・フィート両方で言えるように)[ altitude / elevation ]
  • 天候(最高・最低気温・降水確率)[ highest and lowest temperature / chance of rain ]
  • 地図にその日の移動ルートを記しておく(安全かつ面白みのある道を通る。どこでトイレにいくかも決めておく。洋式トイレがあるかも確認。)[ today’s route ]

「今、どの方角に向かって歩いているのか?(東西南北を知りたい)」「この川は、北から南に流れているんだね?」「太平洋はどっち?」などの質問に、すぐ答えられるようにしておきましょう。

 

3.代替プランの作成 

かなりの悪天候が予想される場合、訪問地がいくら魅力的でも、「屋内にいたい」というお客さまもいます。

そのような場合に対応できるよう、室内でできる代替プランも考えておくと心強いです。(例:美術館、博物館、体験もの)

ただし、勝手に予定(旅程)を変えてはいけない場合があるので、「お客さま皆さまが希望した」「安全上、変更した」などと理論的な説明ができるようにしておきましょう。

 

4、食事・休憩

  • 椅子席があるか?(西洋のお客さまが、床に直接座るのはほぼむり)
  • 野菜や果物が豊富に摂れるか?(日本のレストランや食事処には、フレッシュな野菜や果物を使ったメニューが少ないというコメントが多い。予約済みのレストランのメニューに野菜や果物が少ない場合、その日のルート上で、スーパーに寄れるようにしておく。)
  • ベジタリアンメニューがあるか?
  • アレルギーのお客様がいるか?(小麦、乳製品のアレルギーが多い。命に係わることもあるので、必ず確認します。)
  • 1日を通して、量は適切か?(夕食が懐石コースなら、お昼はサラダまたはフルーツのみ、など軽くすませたい人が多い。)
  • コーヒーや紅茶が買える場所があるか?(午前と午後に必ずご案内できるように下調べ。コーヒーが飲めないと、ご機嫌ナナメになってくる方も・・。)
  • 雰囲気があるか?(静かで、ムードがあり、おしゃれ感漂う場所がベスト)

 

欧米の方と言えば、「全員ハンバーガーとお肉があればハッピー!」というのは、あまり正確ではありません。

もちろん、「ハンバーガーが食べたい!」という方もいますので、とにかく「広く浅く」まずは軒数を知っておくことが大切です。

 

健康志向の高まりから、食生活にかなりの気を使っている方が増えている印象があります。

「ヘルシー・おいしい・雰囲気よい」の3拍子揃った場所を探すのは至難の業ですが、(外国人にとっての)100点満点を目指す必要はありません。それぞれ60点~70点くらいの場所を探すことができれば、大成功でしょう。

 

レストランやカフェにいく時間帯や目的によっても、優先事項は変わってきます。

ディナーなら、「落ち着いた雰囲気」のレストランが好まれますが、ランチなら多少ざわついた店内でも大丈夫です。

 

5.道の状況と移動距離

  • アスファルト?土?石畳?(足のケガを気にする。特に、以前に痛めたことがある方。)
  • 傾斜はあるか?(心臓や肺に持病がある人は、制限心拍数が決まっている場合があり、あまりきつい傾斜は登れません。)
  • 歩く距離と公共交通機関を利用する距離(キロとマイル両方で言えるように。)

どれも、日本人にとっては、日常生活や旅行、出張であまり考えないことですよね。

でも、外国人のかたにとっては、とても重要な要素のひとつのようです。

理由としては、

①けがの防止

その日に履く靴を決める材料にする 

③自分の体調、体力の許容範囲か確認したい 

などが挙げられます。

 

6.その日、聞かれそうな事を予め調べておく

(1)お土産「〇〇はどこで買えるか?」

和紙・浴衣・ちりめん(布の方)・出産祝いのプレゼント・漆器・モンベルのウエアやバッグ(日本のブランドなので人気)・文具・扇子・浮世絵

 

(2)レストラン「フリータイムに○○を食べたいが、良い所を知ってるか?」

フレンチ(日本で食べるフレンチは、日本の食材を使っているので珍しい)・ラーメン・うどん・天ぷら・そば・すし など。

また、おいしいマフィン、サラダが食べられるカフェなども調べておくと役立ちます。

 

(3)その他

両替できる場所は?

薬局はどこ?

解散したあと行けるバーは?

 

7.選択肢が複数ある場合、意思決定に、どの部分まで参加してもらうかを決めておく

心理学によると、(とくに西洋の方は)結論を出すまでに、その「意志決定」のプロセスに全く関わっていないと、反発が起こる可能性が高いそうです。

こちらで案内したい場所があっても、あくまで「相手に選んでいただいている」ような(良い意味での誘導ができる)お話しの仕方ができるとスムーズにコンセンサス(同意)が得られるようです。

 

8.最後に、欲を捨てて、何があっても動じないと心に決める。

「いいところを見せたい」

「せっかく準備して、下見してきた。その中でも、一番のみどころは絶対に見せたい」

などという欲を捨てます。(難しいことですが・・・)

 

「そんなに知っていて、すごいね!」と言われたい、という気持ちは見抜かれてしまいます。

しぐさや言動に、人格や想いが出てしまうからです。

 

また、せっかく下見してきた場所も、大雨なら、ルートを変更して行けなくなるかもしれません。その時、ガイドががっかりしていたら、後の行程に支障を来たします。

 

あくまで、「自分が精いっぱい準備した中から、お客さまの希望にあったネタやトピックがあれば、それを選りすぐって提供する」というスタンスで臨みます。

最も大切なことは、こちらが見せたいもの・伝えたいことを押し付けるのではなく、お客さまの知りたい情報を提供できる環境を整えておくことだと、いつも思い出すようにしています。

 

「いいところを見せたい」という力みを捨てる、という心構えは、以前に皇太子さまへお料理を出されことのあるシェフの方から頂いたアドバイスです。それ以来、私も折に触れて、思い出すようにしています。

 

不思議なことに、この「かっこつけたい」という欲を少しでも捨てる努力をすることで、「何があっても動じない覚悟」が、ほんの少しずつですが、芽生えてくるような気がします。

 

現場では思いもよらぬ事が多々起こりますので、常に落ち着いていることが大切ですね!

 

最後にひとこと

以上の8つのリストの大部分は、いわば、「外国人のお客さまに質問される可能性の高いことリスト」でもあります。

それらを、予め準備しておくための基本リストとして、まとめました。

 

通訳案内士の皆さんのやり方は、十人十色。私が挙げたこれらの他にも、いろんな「直前チェックリスト」の項目があると思います。今回は触れませんでしたが、身だしなみについてなども。

今回の私の記事は、あるひとつの例として、ご参考にしていただければと思います。